その16(10話)151【ニッポン人の定義7】 豪雨や台風の被害予測よりも 桜の開花や紅葉の時期予測に関心のある人種。 --------------------------------------------------- 152 【来世~芭蕉の場合】 松尾芭蕉が、 旅に病んで夢は枯野をかけめぐる と、一句ひねった3日後に、眠るように息を引き取ると── 風になっていた。 そこは枯野というより荒野で、 動くものといえばしぶとく生き残ったゴキブリだけ。 --------------------------------------------------- 153 【あの世~三島由紀夫の場合】 昭和四十五年十一月二十五日午前十一時ごろ、 三島由紀夫が陸上自衛隊東部方面総監室にて 割腹して果てると── 「おみごと!」「ん~、いまいち」「痛かったでござるか」 「刺したら横に引かなきゃ」「介錯の手際が悪い」…… 先輩格の赤穂浪士に囲まれていた。 ……「おぬしの美学ってなに?」「あんた男色家やろ?」 「まゆ毛濃いな」「胸毛がそそるぞ」「金閣寺って難解やな」 「お、素チンだな」「武士の魂が聞いてあきれる」…… ほぼイジメだ。 三島の目に涙。 --------------------------------------------------- 154 【ニッポン人の定義8】 汚染米を食わされていたと分かっても無反応だが、 ひいきの韓流スターが婚約すると 落ち込んで飯がノドを通らなくなる人種。 --------------------------------------------------- 155 【あの世~一郎さんの場合】 田中一郎さんが老衰で天界に召されると── 精神病院にいた。 みんないた。 あの世イコール精神病院だった。 --------------------------------------------------- 156 【ニッポン人の定義9】 善悪より利害を行動基準にしている人種。 --------------------------------------------------- 157 【あの世~太郎さんの場合】 鈴木太郎さんが単身赴任先で過労死すると── 累々たる屍の山の頂にいた。 全部自分の死体だった。 自分が殺してきた自分だった。 --------------------------------------------------- 158 【神】 時は室町。 ひでりが100日続いた。 枯れた野っ原でひとりの陰陽師が雨乞いをはじめた。 へんにゃらほぉ、らんにゃらほぉ。 むらむらめろりん、もらもろはろりん。 がりまりもぉおおおおお! がぁああああああああ! 村人が集まってきて、半信半疑で陰陽師をみつめた。 半時ほどして、ぽつりぽつりと雨粒が落ちてきた。 やがてそれは大粒となって地面をたたきつけた。 おお、降ってきたぞおお。雨じゃ雨じゃああ。うひゃああ。 人々はひざまづき、陰陽師を伏し拝んだ。 ずぶぬれになりながら、陰陽師は調子付いてきた。 神よー、ありがたやありがたや。 願わくは、そのお姿を我らの前に現したまええ。 いくら拝んでも神は姿を見せなかった。 せめて、せめてその存在をお示しください。 ズドガァアアアーーーン! 空からおそろしくでっかいジョウロが落ちてきて、 陰陽師と村人たちを押しつぶした。 --------------------------------------------------- 159 【ニッポン人の定義10】 ●組織内でとりあえず自分がクビにならない程度に 他人に協力しない人種。 --------------------------------------------------- 160 【ストレス保存の法則】 説明:宇宙に存在するストレスの和は一定である。 言い換えるなら、 誰かが発散したストレスは別の誰かが蓄積する。 例:・カラオケ店内の客と店員のストレス。 ・空手道場内の有象無象と近隣住民のストレス。 など。 |